魂の重さは何グラム?―科学を揺るがした7つの実験 (新潮文庫)

 とりあえず、レン・フィッシャー『魂の重さは何グラム?―科学を揺るがした7つの実験』(新潮文庫)は面白かった! と断言します。ただ、この面白さを誰もが体感できるかというと難しいのではないかと思います。
 何故なら文章がもったいぶった書き方だから。もっとはっきり書けよと突っ込みたくなる箇所が端から端まで散りばめられてました。だからこの書き方が嫌なひとは、なんとなく馬鹿にされた感じを持つと思います。科学者らしい、もってまわった表現とユーモアだと私は思いますが、明言していないことについてどう対応するかで読後感が違うと思います。例えば「二度とはゴメンだ」と書かれてはいてもそれが面白かったかつまらなかったかには触れてないので、つまらなかったんだな、と解釈してはいけないのです、きっと。面倒といえば面倒です。
 また、注釈が非常に多い。この注釈がやたらと面白いので無かったら面白さ半減でしょうが、読むのにあたり栞をふたつ使って、本文と注釈と参照しながら読まないとならないのはわずらわしい。図表にも解説がちゃんとあって、最後にまとめられていますが、これもいちいち本文と参照するのは厭わしい。
 内容が面白いだけにそういうところが残念です。それと、実は注釈も中途半端なところがあって、詳しくはwebで、じゃないですけど、この本/論文を読んでください、というので終わっているときに、キイイイイ! となります。そこから先が知りたいの! って。日本語ならこの本を、というのは探すのが面倒だし、英語論文は探すのも面倒なら読むのも面倒。電気化学のあたりなら普通に読めるかもしれない気がしますが、生命の起源とか全然興味ないから日本語だって読む気になれません。相対性理論は計算するのには困らない程度にしか掴めてないので英語は無理です。
 今は当たり前と思われていることについての、昔の科学者たちのアプローチの仕方、錬金術から化学への移行、技術の進歩等、新しいことが分かってくる過程にぞくっとします。知りたい、という欲求に対する熱意と行動があってこその現在だなあと思うと、くそぅヤングめ粒子でも波でもどっちでも良いよもう、と恨めしく思っていた学生時代が恥ずかしい。読んでいてとても面白いのですが、あちこち欲求不満になります。特に自分の勉強不足が。
 やっぱりガリレオとニュートンはすげえと思いました。アインシュタインはそのすごさを私はたぶん理解出来ない。習得した物理学のレベル的に。
 というわけで、せっかくなので、和田純夫『プリンキピアを読む―ニュートンはいかにして「万有引力」を証明したのか?』(ブルーバックス)あたりにいってみたいところです。和田純夫/大上雅史『数学が解き明かした物理の法則―ニュートンの『プリンキピア』から量子力学まで 数学的着想と自然観の変遷 (読んで楽しむ教科書)』ベレ出版とどっちが良いかちょっと考え中ですけど。

2009.06.08 Monday 20:33| comments (0) | trackbacks (0) |