猫舌党員に告ぐ

 我々猫舌党は、猫舌の正当な地位と待遇の向上を要求し、「アツアツ料理は美味い」という固定観念に断固反対するものである。
 過去、我々猫舌は「熱いうちが美味しい」「熱いうちに食べるのが醍醐味」等、固定観念の押し付け、「熱いうちに食べるのが美味しい」つまり「美味しいうちに食べないのは礼儀知らず」「せっかく作ったのに」という情に訴える卑怯な手段により、まさに煮え湯を飲まされ続けてきた。しかし、さまざまな調理法や保存法が確立されている現在、アツアツの作りたてを食べなければならない理由はもはやどこにもない。
 それにも関わらず、食育の現場では「熱いうちに食べると美味しい」という教育がなされている。これは幼い子どもに対する洗脳であると言わずなんと言おう。炊きたてホカホカご飯は、火傷しながら食べるのではまず食料としての役割を果たしていないと、猫舌以外の人民は知るべきである。苦労せず食べられると言う意味において、炊きたてホカホカご飯よりも冷蔵庫から出したばかりの冷たいボロボロご飯のほうが魅力的と感じるのが我々猫舌なのである。
 猫舌と猫舌以外のひとびととのこの意識の違いが、我々の地位の低さを象徴していると言えるであろう。
 脅迫としか表現できない「熱いうちに食べないと作ったひとに失礼」などという台詞、「猫舌なんて子どもみたい」という嘲笑、周囲と食事のスピードが合わないことに対する無言の圧力に屈して火傷を負い、人知れず苦しんでいる猫舌は、声をあげることもなくただ耐えるだけの存在なのだろうか。
 無理に口にすれば舌を火傷することが確実に分かっているのにも関わらず、熱い料理を強引に勧めるのは、猫舌ハラスメントと言えよう。アルコールハラスメント同様に、宴席での配慮がなされてしかるべきである。「アツアツが美味い」という画一的な価値観は、今こそ打破されるときなのだ。
 我々猫舌党は、正当な自己防衛としての「アツアツ料理を食べない権利」を生存権の一部として主張する。
 決して猫舌以外の人民を圧迫することなく、共存共栄を目指し、啓蒙運動による地位向上と生態の理解を進め、「自販機の『ぬる〜い』設定の創設」「温度を測れるスプーンや箸の有料配布」など、ゆりかごからベッドまで、猫舌の日常生活支援に務めたい。

2009.08.29 Saturday 22:46| comments (0) | trackbacks (0) |