友人とはかくもありがたき

 本日は昼に大学で催しがあったので行ってきました。授業ではない先生の講演はまた違った楽しみがあるものです。私も少し時間をいただいて一席ぶったのですが、やっぱり教授は話が上手いね。当たり前だけど。先生のあとじゃ絶対しゃべれないなと思いました。
 帰りに先生方と学生数名と昼食を食べました。通信制大学でもこうやって交流がもてるのはたいへんありがたいことです。世の中食うや食わずで必死に生きているひともいるのに、食事しながら教育についてや企業についてを友人や教員と語れる人生で本当に嬉しい。貧困にあえいでいるひとたちにはひたすら申し訳ないのだけど。
 話はあっちこっちに飛びながら、何がセクハラなのか、学習の仕方、今後の展望、社会は変わるか、あっという間の約二時間でした。誰かと語り合うのは実に刺激的で素晴らしい。
 誰か相手がいればアカデミックな議論を交わすことに夢中だったかつて(なんたって20世紀の出来事だ)の大学時代を懐かしく思い出しました。当時の彼氏は議論をふっかけても「そんなことより今度の日曜はどこに行く?」なんて言い出すのでつまらない思いをしたとか、つまらないから議論の相手をしてくれる建築や法律の友人とばかり昼食を取っていたら拗ねられて大変だったとか、ファッションの話かアクセサリーの話か化粧の話かテレビドラマの話か男の話ばかりしている女子学生とは話が合わなくてでも友達が欲しくて悩んだとか。
 その議論仲間だった経済学科の友人は10年経って経済学者になったわけですが、先々週は学会で仙台に行っていてお土産を買ってきてくれました。笹かまよろしく! と言ったのに小さな四角い箱を差し出すので、「まさか羊羹じゃないよねー」と言ったらショックを受けていました。私が餡子を嫌いなの、知らなかったんだって。
「ほんとに? 嫌いなの? そうだっけ?」
「そうだよ。嫌いだよ。え? 知らなかったの?」
「そんな、いや確かに和菓子を食べないイメージはあったけど……」
「餡子だけじゃなくて、基本的に豆類は嫌いなんだよ。グリーンピースもエンドウも嫌い。豆類で好きなのは豆腐と味噌と醤油と油揚げくらいだよ」
「じゃあもしかしてずんだも嫌いなのか」
「嫌いだね」
「そうだったのか……」
「つまりきみは羊羹を買ってきてしまったんだね? しかもずんだの」
「おかしいなーきみの好き嫌いは結構把握しているつもりだったんだけどなー。茄子ときのこ類は存在無視とか」
「餡子と豆類もだよ。合宿の朝食で納豆食べた事ないよ。きみにあげてたじゃん」
「そう言われてみれば生卵を嫌いなきみは僕の朝食のおかずをやたらと増やしていたような。そうだ、きみが買ってくる南部煎餅はゴマばっかりだ」
「うん、ピーナッツ嫌いだもん」
「後輩がお一つどうぞってアーモンドチョコレート配ってても断ってたのはそのせいか」
「そうだよ。なんだと思ってたの」
「ただの気まぐれ。きみは好物でも食べたくない時は大胆に断るから。これ好きでしたよね! って渡されても。その後輩がショック受けてても、キッパリ」
「うん。しかしその認識もなんだか失礼だね」
「きみが失礼なんだよ」
 ほんとは要らないのに受け取って心にも無いお礼を言うほうがよほど馬鹿にしていると思うんですがね、私は。要らない時は要らないって言う。貰っても無駄にしそうなときは貰わない。他のひとの手に渡ったほうが役に立つことも多いし。だから家族全員羊羹嫌いだったら、申し訳ないけど貰わなかったと思います。私以外は羊羹好きだから貰ったけど。
 というわけで、ずんだの羊羹は私の両親と弟妹が美味しくいただきました。私は彼がちゃんとお土産を買ってきてくれたのが嬉しかったので、まさしく気持ちだけをいただき、満足でした。要冷蔵の笹かまが悪くなったら困るから、と羊羹に行き着くまでに一時間も悩んでお土産を選んでいたなんて聞かされてはね。
 その日の別れ際に「きみ、チーズも嫌いだよね?」と彼は確認をしてきて、「いや、けっこう好きだよ」と答えながら私はまた笑ってしまったのでした。でも、私は私なりに、彼が私の好き嫌いぐらい知っているだろうと自惚れていたことに気づいたので、それなりにショックだったんですよ……

 大学の帰りに地元の市立図書館で本を貰ってきました。「リサイクル資料」として、ロビーの本棚に廃棄される予定の本が並んでおり、自由にお持ち帰り出来るのです。
 いつ読むんだ? と思いつつ、気になった四冊を遠慮なくいただいてまいりました。きっちりカバーもかかっていて状態も良いから思わずなでなでしてしまう。

  • 『映画この百年-地方からの視点』熊本大学・映画文化史講座編 熊本出版文化会館 1995年
  • 『中世の窓から』阿部謹也 朝日新聞社 1981年
  • 『地球と存在の哲学-環境倫理を越えて』オギュスタン・ベルク 篠田勝英訳 ちくま新書 1996年
  • 『メディアの逆襲!-【欲望の結晶】としてのヒーローはどのようにして生まれるのか』香取淳子 文芸社 1993年
2008.06.08 Sunday 18:26| comments (4) | trackbacks (0) |