あたたかい気持ちになる予定だった
なんとなく勢いで梨木香歩『西の魔女が死んだ』を読みました。映画は観たことありません。良い話か嫌な話かと言ったら良い話なんだろうけれど、私は好きになれない内容でした。解説が特にダメでした。ああしろこうしろとやたらと押し付けがましい。金積まれたってやるもんかい、という気分になります。嘘です金額次第ではやります。←この発言、この本を読んだ感想としては完全にアウトですな。
人間として、というか生き物として、正しいのは圧倒的におばあちゃんなんですけど、私はあれについていけない。生活のすべてが何もかも丁寧で、ほんと「生きている」という感じ。でも、出来れば飯なんか食わないでも生きていけると楽で良いなあ、子どものころは新聞読みながら食事って死ぬほど行儀悪いと思ったけど今になると食事なんて栄養が取れればそれで良いんだから食べながら新聞はむしろ推奨したいなあ、空腹感を感じないのなら「誰かと楽しむ」のが目的のときだけ「食べる」ことにして、他はなんか適当に、点滴はちょっと嫌だけど、食べなくて済むなら生ゴミも出ないし支度も片付けも要らなくて便利だなと思います。どうしてそういう体じゃ無いんだろう。
そんな感じの私なので、あそこまで周囲を美しいものとして全身で見て感じて生きていくのは、理想ではあるかもしれないけど、やりたいとは全然思えないです。おばあちゃんの言葉はいろいろと考えさせられて興味深いのですが、数々の訓戒のうち、私は早寝早起き以外は実行できる気がしません。ハーブとか食事とか長々書かれて読むのが苦痛でした。なんかもう、やたら疲れました。文章は平易だし難しい単語もなく、ただ美しく自然で優しくて緩やかで奇麗な落ち着いた世界なのに、それに対しどちらかというと嫌悪感を抱いた自分にガッカリです。読むとほっとするよ、と友人に言われたのですが、読み終わって確かにほっとしたけど、長い話じゃなくて文字もでかくて勢いで全部読める本で良かった、これに三日かかったりしたら辛すぎる、終わって良かった、のほっとした、でした。
あと、おばあちゃんとちゃんと話せないままだったとか、ゲンジさんとの微妙な和解とか、とくにひねりも何も無く予定調和でそのままという感じで拍子抜けしました。「日常」と言える範囲の出来事ばかりなのでひねりは不要なのかもしれませんが、穏やかで優しいばかりで物足りなさが残ります。読了後に帯を読んで「え、最後の3ページ、何が書いてあったっけ」と慌てて戻ってしまいました。で、その3ページの何がどう泣けるのか全然分からず、あーあと思いました。
感受性が貧弱で鈍感な私が読む本じゃなかった。