北村薫トークショウ「春のなごり雪」

公開講座「北村薫トークショウ」

 知らなかったけど私は実は案外ミーハーらしい。サイン会についついドキドキした。いやー、新たな自分を発見してしまいました。これで我が家にあるいわゆる「サイン入り」はギタリスト大萩康司のCD4枚と本日のサイン本3冊になりました。全然統一性が無いな。
 その昔持っていた『ぴょこたん』シリーズのこのみひかる氏のサイン本は行方不明。あれものすごく好きで、地元のスーパーの本屋に著者が来てサインしてくれたときは大喜びしていたらしい(未就学児だったので記憶が無い)です。
 あとね、会場に忘れられていた哀れな眼鏡、どうやら北村氏のもののようで、そう聞いたらストーカーもびっくりな感じで写真撮っちゃいました。何の変哲も無い普通の黒いふちの眼鏡なんだけど。
 読んだことはある(しかも最初に読んだのは有栖川有栖他『新本格猛虎会の冒険』である―――タイガースファンでも無いのに!)程度のにわかファンとは違って、本気のファンがたくさんいらしたのだから、ずうずうしくサインの列に2回も並ばずにさっさか帰るべきだったような。

 一応、私の覚書として、話の内容と感想を軽く並べておきます。演目がきっちり公開されているリサイタルなんかと違って、内容はそのとき聴いたひと限定の情報のような気がするので、詳細には述べません。スタッフがICレコーダーで記録していたようですから、いずれ作品化される可能性もあり、そういうのを邪魔しちゃいけないと思うので。
 全体としては、面白かった! 北村氏は何度か咳き込むことがあったので喉の具合が良くなかったのかもしれません。心配だ。

  • 全体として人数は40名ほど。うち2名がほとんど熟睡。男女比1:4かもう少し男性が多いかな。
  • 2010.04.03にジュンク堂書店池袋本店で行われたトークセッション『北村薫のアンソロジー教室 特別授業』と同じ資料が配られ、とりあえずそのときに話しそびれた話題から。私はそちらの内容を知らないので、どこからどこまでなのか分からないが分かっているひとは楽しそう。
  • 資料の内容は、三好達治『昭和文学全集』第33巻 評論随想集1 p.9-10「朔太郎詩の一面」。最初「わたしたち」である人称が「おれ」になる点について云々。そこはスルーが正しいという三好達治の主張だが、私はとてもスルー出来ない。
  • 時々北村氏は私が「速水ポーズ」と認識している、腕組みして片手を口元に持ってくるポーズをとっていた。似合う。速水って誰だ、とお思いの方はかわぐちかいじ『沈黙の艦隊』の1巻を読んでください。他の巻だと出番が少ないので、1巻。
  • 基本ずっと笑顔。多少眼鏡をかけたり外したり。
  • 時間ちょうど開始、トーク終了は16:11くらい。質疑応答に挙手は無い。でもその後の「お土産」には挙手がそこそこ。手を挙げた方々は私とは違う本気のファンだろう。
  • お土産の内容は、ジャケットが以前と違うので新しいと思って買った義太夫ベストのCDと、こちらも装丁がちょっと違うために持っているのに買ってしまった佐藤春夫『病める薔薇』の復刻版と、このミスの漫画雑誌のほうで北村薫作品が掲載されている3冊。じゃんけんの勝者がお持ち帰り。
  • 北村氏の発言「書きたいものを書くには、作家ではなくほかに仕事がないと無理。食っていくために書くと書きたくないものを書くことになる。書きたくないものも書けてプロと言う考えもあるが」趣味でやっているときが一番楽しい、というのはあちこちの分野で聞く話。
  • 北村氏の発言「昔のひとが読んだ本を読まないとその様子が分からないから古い本の復刻版を買う」そんなふうにあれこれ買っていたら「通販生活」のあの本棚が必要だろうなと思った。あれは床が丈夫でないとダメらしい(サインしてもらっているときに訊いてみた)。私は氏の全身写真を我が家にあった『暮らしの道具 ピカイチ事典』の本棚のページで確認して出かけた。
  • 北村氏の発言要約「詩集はレイアウトすべて、ページをめくって次を読むそれを含めて『詩』なので、初版を集める趣味は無いが詩人が作ったレイアウトの本を読みたいので復刻版を買う」つまり、中原中也の詩集を、内容は同じなのに何冊も買ってしまいでも最初のレイアウトのを持っていない私はなんていうかこう、味わいきれてないことになるのね。また湯田温泉に行こう。
  • 春日部高校の、厳しい古典の先生の話がてんこ盛り。先生はいつまでも先生、と北村氏も中田教授も言ってました。それ、最近私もひしひしと思います。
  • そうか、らき☆すたの舞台は埼玉なのか。でも『ひとがた流し』の舞台は違う場所のつもりだった。似た風習を後から知ったらしい。埼玉県民じゃ無いから、埼玉のどことどこで風習が違うとか言われても全部「埼玉」で良いじゃん、と思った。
  • 買った本。置いてあった本はだいたい100円引きでした。『北村薫のミステリー館』(新潮文庫)『北村薫の創作表現講義―あなたを読む、わたしを書く』(新潮選書)の二冊。複数サインの場合は、名前の隣の猫の表情が違う。これはファンには堪らない感じ。

 北村氏も中田教授も、国語教員だったと言うことで、正直、国語教員をというか国語教育を全然信用していない私ですが、話は楽しく聴けました。トークショウというよりも講演会っぽかったですけど。
 国語って、感想はひとそれぞれなんでもアリとの建前と、試験ではちゃんとマルバツがつくその矛盾に納得がいかないので大嫌いでした。いや、その曖昧さとウソ臭さを今でも憎んでいる。教えるほうはそこに疑問を持っていないのかな。たとえ北村氏に国語を教えてもらったとしても、たぶんそれは変わらないでしょう。改めて自分の国語嫌いを意識しました。
 ああでもねえこうでもねえと誰かと話し合うのはものすごく楽しいのだけど、それについて正しいとか正しくないとか言い始めると途端に醒める。

2010.04.18 Sunday 20:13| - | - |