喫煙所ジプシー

 ジプシーという言葉は差別用語とされていて、正しくはロマと呼ぶべきだとか、我々はジプシーさと自らThe Gipsy Kingsと名乗る音楽集団とかそこらへんは置いといて、紳士淑女だからこそ喫煙所を求めてウロウロせざるを得ない気の毒なひとびとを、その迫害されっぷりに漂うもの悲しい雰囲気を含めて、私は「喫煙所ジプシー」と呼んでいます。
 紳士淑女の喫煙者は、禁煙の場所や、喫煙可でも周囲に妊婦や子どもがいる場合は喫煙を遠慮するものです。横柄な喫煙者はところかまわず喫煙しますが、紳士淑女はそうではない。そのため、紳士淑女ほどジプシー生活を送る羽目になります。
 少年時代がどうだったかは置いといて、「すぐ止めるよ煙草なんか」と常日頃言いまくっている友人の経済学者は狼青年を経て狼中年になっていますが、ついに4月1日から禁煙するそうです。おお、これで食後に喫煙所を探して彷徨う必要が無くなるではないか。
 彼は基本、真面目なので、灰皿は設置されていないが数名が入れ替わり立ち代り煙草を吸っているコンビニ前とか、喫煙所だけど若い母親がベビーカー連れて喫煙しているとか、そういう場所で煙草を吸うことが出来ません。おてんとさまがみてる理論で後ろ暗い気持ちになるようです。また、私が煙草を苦手としているので、飲食店で喫煙席を利用することもまずありません。いいひとです。
 そのため、一緒に出かけると喫煙所を探し歩くことになるのです。ホームグラウンドたる横浜でも、喫煙所が減りつづけているため過去の記憶は当てになりません。渋谷のように喫煙スペースの地図が設置されれば楽なのですが、横浜にそんな便利なものは無いのです。もっとも、税金でそんなもの作るなと私は思うので無くて良いのですが、とにかく無駄に歩いています。
 歩くのは健康に良いが歩いている目的は喫煙所、という不健康な行脚。
 横浜市ではフライングで飲食店の完全禁煙が実施されはじめています。これまでだったら100円マックで喫煙所代わりに出来ましたが、もう横浜市内のマクドナルドは禁煙なのです。今後もますます喫煙所ジプシーは増えるでしょう。自宅ではホタル族、路上喫煙はダメ、道端や駅構内の喫煙所は減る一方、飲食店内も原則禁煙、禁煙タクシーも増えているとなれば、もう喫煙バーに行くしか手段がないくらいにまで横浜の喫煙者は追いやられています。
 私は煙草は苦手で、煙草を吸ったばかりの人間のそばに寄るだけで、頭痛はするしのどは痛いし目は痛いし鼻水は出るし良いことがありませんから、無煙社会は大歓迎ですが、これが正義だと言わんばかりに喫煙者を追い詰めるのは横暴だと思います。
 阿片を撲滅したときみたいに、免許制にして新規を増やさない政策にすれば良いのに。

2010.03.29 Monday 21:39| - | - |