『シャーロック・ホームズ』『フィリップ、きみを愛してる』

 22日は予定通り映画を2本観ました。どちらもなかなか面白かったです。そして食事はピッツェリア・トラットリア ポジリポ エ ナプレでした。どちらがより面白いとか、それはひとそれぞれだと思います。面白さの質が全然違うので。
 どちらもコメディ調の娯楽映画ですが、ホームズは冒険活劇風味、フィリップは感動する(はずの)失笑系です。ホームズはもっと細かいところで原作を意識した描写があるともっと面白かったでしょう。
 フィリップはどこで笑っていいか分からない。でも面白い。夜中にテレビでやってたら、おいおいと遠慮なく突っ込みいれながら寝そべって観るのに非常に良い感じです。
 ホームズもテレビでやってたらというか、チェックしながら自宅でまた観たいです。あんまり原作の小ネタをあちこち仕込んであったようではないのですが、『四つの署名』後かつワトソン結婚前の状況を原作できっちり確認してからもう一度、という感じですね。

 ネタバレなので、映画の感想は折りたたんでおきます。とりあえず、ホームズとフィリップの間に食事をしたイタリアンについてと、映画の後寄った本屋で購入した本とその他について。
 前述しましたが横浜高島屋8階のイタリアン、ピッツェリア・トラットリア ポジリポ エ ナプレで食事をしました。私は初めて行きましたが、ピザが薄いのにもちもちしていて美味しかったです。前菜は菜の花と何の貝だか忘れましたが貝を、ピザはトマトと海老、パスタは名前忘れましたがうどんみたいに太いやつ。全部美味しかったです。私は次の映画で寝たらヤバイと思ったので、肝臓が良くなってお酒解禁でしたがお茶のみ。最後に友人がカプチーノを頼んだら、表面にカワイイ絵を描いてくれました。カップを持ってきて、テーブルで。以下そのカプチーノに関する会話。
「男女ふたりだとコレなんじゃないの、僕、両親と来たときも、後輩と来たときも、カプチーノこんなじゃなかったもの」
「つまり何か誤解されているんだね」
「誤解されているんだろうなあ、こんなハートだらけにされちゃって」
「ホームズさんとワトソンさんみたいな関係だとでも思われたのかな」
「どっちがどっち?」
「どっちかの結婚が決まったとき拗ねるほうがホームズ」

 帰りに美術手帖2010.04を買いました。今回はディック・ブルーナ特集でして、表紙がうさこです。あの半分顔を出した様子が超可愛い。頭悪そうな表現ですが、超可愛いとしか言えません。超可愛い。
 職場の先輩が図書館で見かけたと、わざわざメールで連絡をくれました。鉛筆書きっぽいスケッチが付録でついていて、これがまた超可愛い。本文、全然読んでないですけど、さまざまなうさこを眺めるだけで通報されそうなくらいニヤニヤ出来ます。超可愛い。
 でね、横浜ポルタ地下街にある丸善では、現在、ViViとかフラウとか女性雑誌を買うとうさこのメモ帳をもらえるんですって。レジのひとの背後のダンボールの中身が、どう見てもオレンジうさこで、でもゼクシィのダンボールなんですよ。気になって気になって気になったので、友人に呆れられながらも店員に質問したら、女性雑誌のおまけにしているとのこと。
 近頃流行りの女性雑誌の付録を馬鹿にしていましたが、4種類のメモ帳を手に入れるために雑誌4冊か……絶対読まないのに……しかも可愛くて使えないからと保管されるだけのメモ帳……畜生! 乗せられてたまるか!
 でも今日、職場でそういう雑誌買ってないか女子社員に訊いてみました……誰もいませんでした……
 無駄な雑誌を買うなら自分で普通にうさこメモ帳買いますよ。別にレアなものじゃ無さそうでしたから。悔しくなんか、無いんだから!

 というわけで、映画の感想は以下に。

 まずは、『シャーロック・ホームズ』、わりと普通に面白かったです。全体的には、なんだかやたら長いオープニング、という感じでした。ベーカー街221Bの玄関の映し方はテレビシリーズを意識していると思いますが、ランプが追加されている点が違うようです。
 ホームズさん、さすがに映画でコカインは無いよねと思っていましたが、締め切った部屋で引きこもり生活をしていたとき、ワトソンさんが来て窓をガンガン開けていて、そのときどうもやってたんじゃないかという様子が伺えます。事件のとき以外は基本的にダメ男、という前提を守った描写に満足しました。でもロバート・ダウニー・Jrがコカインでは洒落にならなくなってしまう気もします。
 ワトソンさんは少し足を引きずり気味に歩いていましたので、戦争での怪我は左足説を採用していたようです。たまに肩のことがあるのですが、ここは足で。また、ワトソンさんの婚約者はメアリー・モースタンでしたので、『四つの署名』のわりとすぐ後の出来事だと推察できます。しかし、ワトソンとホームズの会話で「兄の別荘に」というホームズの発言にワトソンが違和感を持っていない点に矛盾があります。ホームズの兄、マイクロフトが登場するのは「ギリシャ語通訳」であり、つまりいったんホームズが死ぬことになる「最後の事件」のちょっと前で、そのときワトソンさんは「君に兄がいるなんて初耳だ」とびっくりしてます。しかし映画ではまだモリアーティ教授と知り合う前でしたのでおかしいのです。
 アイリーン・アドラーは文句無く可愛かったです。まるで峰不二子のようでしたが、可愛かった。ただ、ちょっと若すぎるかもしれません。そこもちょっと矛盾といえば矛盾……あと、映画の紹介の「唯一愛した女性」という表現がちょっと気に食わない。アイリーンは、愛したというより認めたという感じなので、ラブの要素は薄いと思うのよね。ここらが御手洗大好きなレオナと違うところというか。
 とくにシャーロキアンでもない私がこのくらいツッコミ入れられるので、ファンにはあちこちツッコミどころ満載の、そしてそこも楽しめちゃう映画でしょう。変じゃん、と思いつつこれはこれで良いかなと思える内容です。どこかの出来の良い二次創作にあるかもしれない雰囲気です。
 残念ながら、ワトソンとホームズは腕を組んで歩いてくれませんでしたが、ワトソンの結婚が決まってホームズが拗ねまくるあたりは原作どおりなのに果てしなく普通じゃないです。

 後ろの席の若い男性が、連れの女性に向かって「ワトソンがもっと弱弱しいイメージだったから全然イメージが違う、ホームズはもっとカッコいいと思ってた、っていうかワトソン結婚するんだ」と散々言っていて、しかも彼女のほうも「アイリーンって、可愛いけど、ホームズの彼女なんだよね?」などと、いやはやもうなんとも。
 諸君、原作を読みたまえ。すべてそこに書いてあるから。
 お勧めはやはり無料ではじめるトコトン英語のリーディング教材、原文で読むシャーロックホームズです。マウスオーバー方式と、英文和文対訳方式と両方あって、原文も和訳も楽しめるというたいへん結構なサイトです。
 イメージの話をするならば、ホームズさんはもう少し身長があっても良かった。『朱色の研究』では6フィートをやや越えるですから183くらいでしょ。イメージじゃなくて作中の数字の話になっちゃいますけど。それと、ホームズはもっと汚らしくても良いかもしれません。
 ワトソンさんは傷病軍人らしさと医者らしさが両方ちゃんとあってなかなか良かったです。どうしようもないホームズを見捨てられないが結婚したいというどっちつかずが良く表現されていたと思います。
 妹もポスターを観て「で、どっちがホームズ?」と言っていて、私は手前に決まってるだろうがと思いましたが、同行した経済学者の考えによると、鳥打帽にステッキという印象が強いから後ろにいるいかにもイギリス紳士がホームズのような気がするのだろうということです。確かにホームズの肖像は、鳥打帽にパイプ、口ひげをたくわえたものが有名ですが、基本、ホームズは事件が無い時は夜中の3時にヴァイオリンを弾いたり部屋に閉じこもってコカイン吸ってたりするロクデナシです。いかにも紳士とは違います。
 それはちょっとと思ったのは、首吊り状態でぷらんぷらんしてるひとがいるすぐそばでホームズとアイリーンがいちゃついていたラスト。いや良いけどさ……いちゃついていたといってもハリウッド映画でもなければ素直でもないホームズさんですから、キスのひとつもありません。しかし女嫌いのホームズがアイリーンだけは特別扱いしているのが良く分かって微笑ましい。そういう意味では好きなシーンです。

 食事を挟んで『フィリップ、きみを愛してる』ですが、確かにこっちはR15だなと思います。刑務所ネタってあたりから年齢制限はしょうがない感じがするものの、冒頭から夫婦のあからさまなベッドシーンに引き続き、男ふたりの派手なベッドシーンがあります。バリエーションの少ないはずのベッドシーンの台詞が男ふたりなので新鮮。俺のケツに来いとか、要らねー英会話の知識が増えました。全編通してほとんど全員が「Fuck!」って何度も怒鳴っています。刑務所へ入ってからもしばらくは「あれをしゃぶる」発言ばっかり。舐めるでも咥えるでもなくしゃぶるなのか……ふーん。
 このブログ、スパム防止のために下品な単語を禁止に設定しているのに自分で書いてしまっていて悲しくなってきました。
 実話を元にしているわりと、こんなんありか! というエピソードばっかりです。男ふたりが絡んでいるのも、慣れると普通に思えてきて見つめあうシーンは普通のラブストーリーみたいな気がしてくるのですが、何かおかしい。あれだけ堂々とヴェルサーチの胸元を肌蹴て腕を組んで歩かれたら、あーラブラブだねーで終わってしまう。うっかりと、カッコいいなふたりとも、と思いそう。ジム・キャリーは好きでないのですが。
 自分に嘘をつかず、好きなことをして暮らす! としてゲイであることを公言するのに、就いた職業が詐欺師……嘘つかないんじゃなかったのかよ。ゲイであることを隠していたときに結婚した妻デビーに「愛しているよ」と電話するのも変なら、その妻が「ジミーは?」とか「フィリップは?」とそのときの恋人をきちんと認識しているのも変。理解があり過ぎる。
 愛のために生きていると言いつつ、他人を騙しまくり、エイズに苦しんだ元恋人まで利用する。好きなひとと一緒にいたい、愛していると言いたいという普遍的なメッセージ色の強い物語のはずなのに、なんとも滑稽な感じがします。内容だけなら、別にゲイである必要がまるでありません。実話だからゲイなのだろうけど。刑務所で知り合うなら同性で無いと無理だし。
 一番気になるのは、フィリップは仕事をしてないのか? ということ。刑務所へ最初にぶち込まれる前は、いろんな著名人の愛人をやって生計を立てていた模様。ここも笑っていいのか分からないのですが、詐欺で儲け始めたスティーブンが用意した豪邸に住んでいるとき、主夫以外のことをしている様子が無いのです。
 詐欺師もどうかと思うけど、愛人以外の職業(?)に就いてないのもどうかと思う。どっちもどっちというか、ほんとどこで笑っていいのか分からない。
 それでも話の作りとしては面白く、現在と過去をいったりきたりする構成も複雑すぎず良い感じです。私はあまりメッセージ色の強い物語は好まないのですが、共感は出来ないものの楽しめました。あそこまでして頑張って愛を伝えなくても別に良いし、鬱陶しい。正直迷惑。それに、一目惚れで騙して近づいた相手にのめりこんでいるのが、実話なら仕方が無いですが、無理を感じます。もっとこう、素直にラブストーリーを味わえるひとなら、感情移入しやすいと思います。
 個人的お気に入りは「引き受けたら絶対だ」のクリーヴォンかな。彼は漢だ。
 フィリップは、主人公ふたりよりも、ジミーの男前っぷりやクリーヴォンの男前っぷりのほうが私には好印象でした。ジム・キャリーをあまり好きでないのが問題なのかもしれません。ユアン・マクレガーは、なんでこんなに普通に男っぽいのに、こんなに可愛らしい雰囲気なんだろう、役者ってすごいなーと思いました。いやほんとに。

2010.03.24 Wednesday 22:29| - | - |