顆粒1・カプセル1・錠剤4
体調を崩したり予期せぬ出来事があったりで、忙しくしていましたが、一応、落ち着きました。そしたらまたどっと疲れが……なんだかんだで食前の薬が4種類、食後が2種類と増えまして、混乱しています。だいたい、あんなぐったりした状態の患者に薬の説明をして、しかも白い錠剤ばっかりで、きちんと認識できるわけ無いじゃん!
しかししばらく続けてみましょうなんて話になっているのでちゃんと覚えないと。これをここ3週間で4種類増えただけの私が覚えきれないのだから、間違える年寄りが多いのは当たり前だと思う。
そんな感じで今週からやっと本格的に会社に戻りました。いかに既得権益てんこ盛りの正社員でも、あんまり休めば立場は危うくなってしまうので、真面目にやっております。
職場であちこち計算していて、あーこの積分忘れたヤバイと思ったので自宅に戻ってから本棚をひっくり返したのですが、大学で使っていた数学の教科書が一冊もなく、焦りました。記憶の糸を手繰ってみたところ、友人の経済学者に無償で譲ったことを思い出しました。
当時は、講義をサボってばかりのくせに厳しいと有名なゼミに入ってしまった経済学部三年の同じサークルにいた男です。
彼は、このままだと本当に何も勉強しないうちに卒業しちゃうなーゼミくらいちょっと厳しいところに行って、でも別に卒論は必修じゃないから無理そうだったら落とすことにして、とりあえず否が応でも勉強しないとまずい状態にしてみよう、と思い立ったそうです。
で、数学が難しくて拗ねてました。
私が空き時間に学食でレポートを書いていると、ふらふらっと寄ってきて「教科書の途中式が分からない」とぼやいていくのです。
「途中式は省略って、そこが分かんないのに」
「でも大事なのは経済理論なんでしょ」
「そうだけど計算できないと納得できないし」
「じゃ頑張って計算しなよ」
「……見覚えの無い記号ばっかりなのにどうやって」
ちょっと見てみてきみは工学部でしょうと経済学の教科書を押し付けられ、確かにそれはそんなに複雑な計算ではなかったので、経済理論はちっとも分かりませんでしたが、なんとなく途中まで解きました。何故途中かと言うと、私の手元を見ていた彼が、「あ、そこから分かる!」と言ったからです。
そして、「助かるよー。これ、明日のゼミまでに各自理解してくるようにって課題だったんだよねー」と上機嫌で去っていきました。
そんな感じで彼は毎週現れ、だんだんと数学は難しくなり、初回は30分もかからなかった計算が、1時間になり2時間になり、ごめん明日までになんとか、になりました。自分の専門科目で課されている課題も毎週レベルが上がり、5週めくらいで私がついに音を上げて、「てめえでやれ! 教科書は全部くれてやる!」となったわけです。
いやー、懐かしいなあ。あれだけ勉強しなかった男がヒマさえあれば教科書読むようになるなんて、ゼミは相当面白かったんだろうなあ。やっぱこう、教育ってのはやり方次第っていうかきっかけ次第なんだなあ。
っていうか、無性に腹立ってきました。いまさらだけど。