南紀の旅

 6日夜から9日夜まで南紀に出かけていました。関東に戻ってきたとたんにあちらに台風がお邪魔しているようで驚きました。なんでこんなに南の国は湿気がすごいんだ、水はけの良いところなんてないんだろう、体にもコケが生えそうだと思いながらクソ暑い熊野古道を歩きましたが、大雨の中歩くより余程マシだったのだなあと思いました。
 職場の和歌山県民の実家に顔を出し、本人は定年後でヒマしているので、あちこち(グリーンピア南紀とか)案内してもらったり釣りしたりしてました。何も無いイナカだ、という言葉を信じていましたが、恐山周辺より10倍は栄えているじゃないか騙された、と思いました。
 とりあえず、紀伊勝浦駅前の足湯「滝の湯」で一休みしてから目的その1である太地町の「くじらの博物館」に行きました。7歳から10歳くらいの男の子の兄弟が、展示されているクジラの睾丸(しかも半分にぶった切られていて哀愁を誘う)を見て、大声で両親に向かい「ちんこだちんこだ!」と叫んで大喜びしていました。ガラスケースを叩いてはいけません。無言を貫く両親を観察したら悪いかなあと思って、目を合わせずに「違うよこっちだよ」と心の中で思いながら175センチはありそうなその父親よりも明らかにでかい生殖器を眺めました。「捕鯨船資料館」は入り口に「蛇が出ます。ご注意ください」と張り紙があり、蛇が大嫌いな私の彼氏は一歩も足を踏み入れませんでした。博物館全体はあまり動線が考慮されていない感じですが、展示は古いものの気合の入った丁寧な解説が多かったように思います。
 クジラの串揚げを食べた後、串本町の橋杭岩と本州最南端の潮岬へ行きました。5月の連休に本州最北端の大間埼へ行ったばかりの私の彼氏は、双方を比較して、端っこというからには大間くらい辺鄙でないといけない気がする、ここは明るくて暑くて寂しくないから隔絶された感に欠けるという感想を漏らしておりました。

 翌日は定年後の和歌山県民の案内で那智山へ行きました。暑さと湿気は屋久島と良い勝負だと思います。ほんとに南国は空気が湿っていて重たいです。海抜2.2メートルとか標識があるのに、ちょっとした斜面に雲が沸いて出ているのがすごい。箱根の大涌谷とか恐山みたいに、火山性のガスかと思って警戒してしまいました。
 熊野那智大社にお参りして、那智の滝を見ました。「二の滝」「三の滝」には行っていません。6日まで雨だったせいで、水量が多かったらしく、確かにガイドブックの写真よりも盛大に水が落ちまくっていました。ここまで派手な感じの滝を見たのは修学旅行の華厳の滝以来だと思います。歩いたのは、大門から那智山青岸渡寺までです。2キロくらいですが、とにかく蒸し暑くて参りました。でももっと歩いても良いと思うくらいには雰囲気が良かったです。観光シーズンではないのか、バスで行くひとが多いのか、徒歩ですれ違うひとがほとんどいなくて、静かで厳かでした。
 帰りはバスに乗って大門駐車場まで。このバス停の前にあるお土産屋さんで「備長炭入り那智飴ソフト」を売っていまして、ご当地アイス好きの私の彼氏が、バス停で前に並んでいるいちゃいちゃカップルがお互いに食べさせあっているのを不躾に眺めていたので、買ってやろうかと言ったのに「バスがすぐ来るみたいだから要らない」と断りやがりまして、その後バスの中で案内人の和歌山県民に「あのアイスはさっきのバス停付近でしか売ってない」と明かされ、うなだれていました。ざまあみろ。
 那智山の後は時間が空いていたので、「ますだ」というまぐろ料理のお店で食事した後は適当に磯で釣りをしました。お店は、カウンターのみ7席しかないのですが、メニューも豊富で、女将さんは親切で味も良かったです。大潮だったので満ちてくるのに合わせて糸を垂らしていたのですけど、フグぐらいしか釣れなくて、餌を取られてばかりでした。私の彼氏は小さいカニを捕まえるのに、こういう貝をひっくり返して中身を針につけて岩の隙間に垂らすと寄ってくる、というのを教えてもらったようで、ひとりで1時間以上遊んでいたみたいです。フナムシから逃げ、ヒザラガイに触れなかった男がまさか1時間でマツバガイを探せるようになるとはね。

 9日は朝から雨で、早朝のイカ釣りは断念し、熊野速玉大社へお参りして伊勢神宮へ向かいました。お世話になったので発つ前に職場の和歌山県民の家に挨拶に行ったら、ご母堂がお弁当にと「めはり寿司」を作ってくれていました。自前で味付けしたという鯵の干物までもらったのに、都電最中しかお土産持って行かなかったよ……「めはり寿司」は程よい塩味がとても美味しかったです。妹に作らせてみよう。さすが農水省の郷土料理百選。ちなみに神奈川は「よこすか海軍カレー」……
 新宮では「浮島の森(PDF)」に寄りました。自然に浮いている島だそうですが、現在は座礁している箇所もあり、きちんと管理して浮かせているあたり、東京駅や上野駅と逆だなーと思いました。ここも娘が蛇の住む穴に飲み込まれたという話があり、彼氏がものすごく嫌がっていました。
 日本人なら伊勢神宮、と意気込んだわりと、着いたのが17時というどうしようもない時間でして、雨の中お参りしました。外宮と内宮と両方行く都合上、19時で閉まるから移動を含めて30分ずつという杜撰な計画を一瞬で立てて、ほとんど参拝者もいなくてほんとにここは伊勢神宮なのかと疑いながらウロウロしました。拝観料が無いのも驚きましたが、これはドバイに税金が無いのと同じ理論なんでしょうか。参拝者が半端無く多いから拝観料無しでお賽銭だけでやっていけるという……駐車場の「1時間無料」もチェックするひといないし。彼氏とは「かみさまの前なので正しい自己申告しか出来ないはず」という信用商売なのではないかと意見交換をしましたが、真相は分かりません。
 屋久島でも思いましたが、南の国は植物が全部でかいのが不思議です。なんでだろう。

 今回寄った道の駅は、「伊長島マンボウ」「大紀町役場 道の駅木つつ木館」「熊野きのくに」「紀宝町ウミガメ公園」「パーク七里御浜」の5箇所です。たぶん。彼が寄ったけれど私は寝ていて覚えていない可能性はあります。

 そうそう、のど飴「那智黒」は潮岬の売店が一番安かったです。新宮や熊野のジャスコより安かったもん。一袋350円、三つで1000円でした。道の駅の高いところは、370円でした。
 おみやげは、地域に愛されて50年のスーパーオークワで買いました。クジラの干物とか梅干とかウツボとか高菜とか。食べ物のお土産は地元スーパーが一番安くて種類もあって便利です。
 本物のクジラをこれでもかと楽しんだので、来年は今度こそ「鉄のクジラ館」に行きたいと思います。休みとお金があれば。

 そういえば、日曜日に投票があったらしい、那智勝浦町の新宮市との合併に関する住民投票はどうなったんだろう。観光地で選挙選挙とやられるとちょっと非常に気になります。

2009.08.10 Monday 21:23| comments (0) | trackbacks (0) |