男になりたいとは思わないが。

 職場の後輩が、明け方まで友達と飲んでいたとかで、酒臭いまま出勤してました。まあたいして仕事ないし、24だか25だかの若い男ですから、「若さゆえだね」と同僚と言っていたら、彼に驚くことを言われました。
「先輩達も、そんなに年、変わらないっすよね? 26とかでしょ? 違うんですか?」
 違うよ。
 大卒で10年近く会社に居座っていて26ってどんな飛び級したんだよ! と思いました。
 何も知らない赤の他人に学生と間違われるのはもう諦めてましたが……かなり真顔で言っていたので、気を遣って若く言っている訳ではなさそうでした。
 もう少し女を見る目を養わないといかんね、彼は。

 そんな初々しい青年が、ショックを受けてしまいましたよ。
 取引先の担当者が変わったかなんかで、新しいひとが挨拶に来ました。各部署でひとりひとり名刺を渡していましたが、男性のみでした。
 その営業マンが帰った後、向かいの席にいる入社三年目の後輩に「きっぱりしたものだね」と言ったら「何がですか?」という返事でしたので、「今のひと、声かけたの、男だけでしょ」と説明をしました。
 それで隣にいた二年目の男の子が「新人同然のおれにも名刺くれたのに」と唖然としていました。
「そういえば女性は全員スルーでしたね」
「まあ、そんなものだよ。年始まわりもそうだもん」
「それまた正月から良い気分しないですね」
「全然だね。でも毎年だよ」
 他部署でも同じように男性社員にしか挨拶をしないその二人組みを見て、後輩は複雑な表情をしていました。男女混合名簿・男子も家庭科・女子も柔道という教育を受けてきた最近の若い男ども(しかも工業高校や工学部で男子に混ざって作業に取り組む女子を見慣れており、パワーが足りないという男との違いを個性と捉え、普通に仲間だと認識してきた連中)にとって、言われなければ気付かなかったとしても、女性だからと言う理由でまるで相手にしない態度は困惑するものであったようです。
 もっとも、挨拶をしてまわる新人っぽい取引先の新しい担当者が、自分の判断で男性だけに挨拶をしているとは思えません。その新人を連れてきた先輩社員の指示なのでしょう。部屋の入り口で挨拶をした後、先輩から耳打ちされてからおどおどと頭を下げてまわっているのですから。女子社員を無視する取引先の態度に驚いていた我が社の男性陣と同年代に見えますから、女性を軽んじる思想教育は受けていないと思うのです。それでも上司から言われたらそれに従うしかない。そういうものか、と思って。
 戸惑いがちに小さな声で挨拶をしてまわっていた初々しい彼も、5年後、いや3年後には涼しい顔して後輩に「男性だけに挨拶するように」なんて指示をするようになるのでしょう。せっかく学校教育で男女平等なんてお題目を唱えても、就職したとたんにコレですから、北海道沖縄開発庁が廃止されても男女共同うんぬんがなくならないわけだ、と思います。
「結婚して辞める可能性のあるきみたちより、若手男性を育てたい」と遠まわしに言われてそれまでの仕事を奪われていく我々よりも、前時代的な教育をしなおされていく男性たちを、私はちょっと痛々しく感じます。

2009.06.29 Monday 21:45| comments (0) | trackbacks (0) |