喪、かと思えばのんきな仕合せ

 栗本薫氏の訃報に、友人の経済学者が意気消沈しております。ぼくの読書人生になかなか大きな影響を与えたひとだった、としんみり喪家の狗です。グインも、終わる終わらない問題よりも、もう続きが書かれることはないという事実に打ちのめされているようです。
 きっと池波正太郎氏が亡くなったときの私とは比べ物にならないほど落ち込んでいるのでしょう。勝手に師だと慕っている池波氏が亡くなったのは私が『鬼平犯科帳』に夢中になり始めたころで、小学生でしたから60代の彼をものすごくおじいさんだと思っていまして、ええっ! とは思っても心がぽっかり、というほどではなかったのです。年寄りだから仕方ない、みたいな。あっさりしたものです。今あるだけで終わりなんだ、と思っただけだった。
 むしろ星新一氏が亡くなった時のほうが私は堪えたなあ……永遠にショートショートは増え続けて私はどんなに読んでも一向に追いつかない、という感覚でいたから。でも私、いまだに池波氏の著作も星氏の著作も、どちらも制覇していません。
 グインもぐずぐずしているだけで1冊終わりかい、と思いつつもいつまでも世界は続くのかと思っていました。結末とかどうでもいい。明日が来るのが当たり前だと思っているのと同じような、続巻が出るのが当たり前という感覚でした。文章がね、まわりくどくて濃くてああ鬱陶しいと思うときもあるくらいで、私はあんまり好みではないのですが、でも偉大なひとだったなあと感服するのであります。ご冥福をお祈りします。

 私の手のひらに「チャペル日程打ち合わせ」と油性ペンで書いてあったのを見た私の彼氏が、僕とはそういう話は出てないのにチャペルの打ち合わせ……と思ってしばらくおろおろしていたらしいです。
 普通に仕事ですよ。
 チャペル改修(入口扉交換)工事、早くやれと急かすくせに6月はシーズンだからチャペルが空いている日が無いと無茶を言う現場との打ち合わせがあっただけです。夜間工事なら工事費上乗せしろっつーの。
 しかし、搬入・取付の職人さんの都合と特注錠前の納期とチャペルが空いている日のすり合わせが難航したせいで、立て付けが悪い上に足元がちょっとひしゃげている扉から厳かに入場してくる花嫁が何人か増えるのだと思うと、申し訳ない気分になります。
 誰も扉なんか見てないと思うけど。

2009.05.28 Thursday 23:32| comments (0) | trackbacks (0) |