尋問、あるいは都市の解剖学 〜愛と貨幣と殺人のパリ〜
ワタリウム美術館からのんびり出たときはそんなに雨風が強くなかったので、だらだら食事したら渋谷を出るのが23時半近くなり、ええもう、いかにも台風でした。早く家に帰るのが良い子説は正しいと思いました。
第3回目の講義はメグレ警視でした。講師のやり方にもだいぶ慣れてきて、穏やかに参加できました。このためにオバケも読まずにメグレばかりを読んでいたのです。
子どものころは、メグレは面白いけどメグレと刑事と奥さんと容疑者っぽいひとが淡々と会話をして、ふんふんなるほどと思っていると話が終わってしまう、つまらないわけではないが拍子抜けだ、ミス・マープルのような安楽椅子タイプではなく自分で捜査するのに、喋っているシーンばかりでお喋りが終わる=物語が終わる、物足りないなあと思っていました。今は、ううむ静かな会話だけでこの心理描写、すげーなー、です。ほんとに、尋問というほどの尋問ではないのに、うまく誘導して答えさせて知りたいことはほぼ確実に聞いている。それで他のひとの答えとの矛盾から考えを固めて、本人をこれまたうまく尋問して最終的には吐かせるのがすごい。説明調とも言えない会話なのに背景や心理はしっかり述べられていて漏れがないのです。
講演では、メグレは容疑者の所属する世界に浸って捜査をする、という話がありました。証拠よりも動機の解明と自白を重んじているとのことで、「ちょっとひっかかる」部分から事件をほぐしていく、そのヒントは家庭や職場での会話、現場や往来で目に入るもの、そういう小さなものだという話で、その捜査方法はシリーズを読めば実感できるものです。それでも私はメグレ夫人とのいちゃラブはそんなに要らないだろと思うのですが。
地道な尋問を中心としたメグレの捜査方法が、セーヌ川を挟んで西と東の都市の格差や当時から多かった外国人の生活等、パリという華やかな大都市の底辺で生きる庶民を描いていて、だから探偵小説なのだが通俗小説であるわけです。探偵もの、という括りでは、女性は愛情関係で犯罪を犯すが男性は金銭関係だとか、メグレ以降の探偵小説はイギリスは謎解き重視ロジック重視路線で、アメリカはハードボイルド、フランスは心理描写と三つのタイプにわかれていったという解説がありました。
そんな流れで次回のチャンドラーに続くようです。私は『さらば愛しき女よ』しか読んだことがありません。一緒に講座を受けている経済学者は『長いお別れ』しか読んだことがないそうです。どっちもどっちだと思います。次回までに何作か読まないと。それにしてもタイトルがことごとく渋くてカッコいい。さすがフィリップ・マーロウです。
林原三尉と柿崎一曹のご冥福をお祈りします。最近の『ジパング』では惜しげもなくいろんな方がお亡くなりになっていて、そうだよこれ戦争漫画だよと改めて気付かされます。鴻上大尉とか野尻大尉とか青梅一曹とか……彼らが何を信じ何故命をかけたのか、あの必死さはどこからくるのだろう。
シーホークは戻ってきたけどあれじゃもう飛べないし、飛行科員もいないから飛ばせるひともいないけど、「帰ってきた」とは言いがたいのではないかと……最終回は菊池三佐(と桃井一尉)しか「みらい」乗組員で命のある登場人物はいないんじゃないかという気がしてきました。
もうこれやっぱ20日に呉に行くしかないと思いましたが、台風とすれ違うのが嫌なので諦めました。台風が嫌というか、東海道はすぐ止まるので、広島での本来の用件の時間に間に合わない可能性があるのが嫌だ。呉で伊507が出撃した(せざるを得なかった)あたりを眺めて来たかったのですが。もちろん「てつのくじら館」は外せません。でも断念……
昨日の白鵬にも驚いたが、今日の朝青龍も。大麻騒ぎとか手をちゃんとつけとか、動揺が大きいため三役もみんな安定していないのかなと思います。