ぼくの大切なともだち

 パトリス・ルコント監督がインタビューで自分には親友がいないけど別に平気と明言していた(http://www.hollywood-ch.com/report/08061201.html)のがスゲエ、と期待して観にいきました。途中で少しくどいところもありますが、全体としてはやや身につまされるコメディとして楽しく観ることが出来ました。まあ、仕事帰りにわざわざ260円×往復(時間としては30分×往復)を費やして観にいっても、損した気分にはならないですね。面白かったもの。でも、隣に座る友人と「我々は友人だよね?」という確認しあうような目配せをしてしまって少々気まずかったです。屋久島土産を渡して、「友情の証だぜ」と言ってみたら「すぐ壊れそうだね、これ」と言われました。その切り返しはさすがだよ……
 ラストに本当にともだちらしくなるところは、おっさんのくせになんてさわやかなんだ! と悔しく思うくらい、見詰め合う瞳と瞳にドキドキしちゃいます。ともだちとけんかしたあと、微妙に気まずいがお互いにこれからも友情を維持したいという腹の探りあいめいた視線の交わし方が、非常にリアルです。
 ドキドキしちゃう、と言えば、さすがフランス映画、「ともだち」でもない女性の共同経営者とギクシャクしているのに別れ際に指先にキスするのなんか、親愛の表現としてキスを用いない私からすると、上目遣いがうひゃあという感じです。あー無理、私には無理、と思います。いや、私、人見知りで基本的にパーソナルスペースは広めのくせに、本当に親しい友人とは再会の抱擁は普通にするし、肩を抱いたり手を取ったり、同じ箸とかコップとか使うのも全然抵抗ないので、友人が帰り際に指先にキスしてきたってちょっとビックリするぐらいで平気だろうけど、でも自分じゃ出来ない。むーりー!
 DVDで何度も観たい楽しい映画、というのとは違いますが、繰り返して観ても面白いと思います。あ、あれ伏線だったんだなというのが細々とあって、確認したくなるし。「ともだち」がひらがなだとどうしても『20世紀少年』の気分になっちゃうんですが、そういえば『20世紀少年』の映画は期待できるんだろうか。
 ところで、観たいなーどうしようかなーと思っていた『幻影師アイゼンハイム』は東京は明日で終わりです。どこかで再上映しないかな。『ラフマニノフ』は再上映が決まったようです。
 パトリス・ルコント監督はあと三本で長編を取るのはおしまいにすると宣言しているので、あと三本、追っかけたいと思います。

 帰りは金曜日のワタリウム美術館での講演の予習に課題図書として『ABC殺人事件』と『バスカビル家の犬』が連絡されていたので、その話をしていました。
 今回こそ都市が出るのかなー。
 いやー「あるいは」だからねー出なくても文句言えないしねー。
 そして、我々はおかげさまでその二冊だけで良いのに、クリスティとドイルを再読しまくっていたので、途中からずっと「ホームズはほんとワトスン博士を好きだよね」という話ばかりしてました。会社帰りのサラリーマンだらけの東横線内でひたすらホモ談義を繰り広げる中年にさしかかりつつある男女二名。
 連れて行く必要の無いところにまで連れてってるもんね、ワトスンに解説して「へえーすごいなホームズ!」って言われたくて探偵してそうだよね、ワトスンが結婚するとき超さみしそうだよね、絶対嫉妬してるよね、でも女性との交際を妨害するわけじゃないんだよね御手洗と違って、その後また同居するために彼の診療所を高値で買い取るように知人に頼んだりしてるけどね、しかもそれバレてもワトスンが「ふーん、あのひとホームズの知り合いだったんだー」くらいにしか思ってないのがすごいよね、完全にホームズの片思いだよね、ホームズが「ぼくは結婚なんてしない」と宣言してワトスンの顔色うかがうのなんか可愛くて仕方ないね、一生懸命ワトスンの気を引こうとしてるよね、そこへくると御手洗は素直じゃないね、可愛さ余って憎さ百倍っつーか御手洗は一途過ぎて怖いよね、年とってからの麻疹はヤバイってやつだよね、比較するとホームズの幸せさが際立つね、ワトスンが天然だからね、自分が撃たれたときうろたえるホームズを見て「深い愛情と誠実さを知り」って感激するワトスン氏の純粋さに脱帽だね、そこまでされたらドン引きだろう? って思うけどね、映画でも腕を組みに行くのはホームズだもんね、ほんと好きだよねー、そりゃモリアーティ教授も嫌がらせしたくなるわ。
 みたいな。言いたい放題だ。延々とおしゃべりしている我々を冷静に観察すると、いまどきシャーロキアンかよ、となるのか、うわーオタクだ、になるのか分かりませんが、原作の英語の解釈だの訳者による違いだのまで話題になっていたのだから、ホームズとワトスンのBL談義ではなくてドイルに関する文学談義だと思われたいとわずかに残った恥じらいが主張してやみません。

『トッキュー!』最終回は、いきなり数年後は嫌だなと思っていたらそれでした。予想したほど嫌な内容では無かったですけど。 五つ子を産んだらしいユリちゃんの周囲にミニ神林が8人はいたように見えました。あんなにいたらちょっと気持ち悪い……石井Jr.があのサイズですでに緑メッシュと黒縁眼鏡なのは笑いました。ユリちゃんの石井のイメージって! 五十嵐と真田の結婚式ではなかっただけまだ良いかな。
 ユリちゃんと神林に関してはユリちゃんの妄想でしたが、スミレと石井に関しては完全な否定がされていないのが気になります。会話の様子では、現在は直美・スミレ・ユリの三人暮らしみたいですけど。
 潜々会では押尾を見られて良かったです。最後にひと目だけでもと思ってました。ヒゲかつ焦げ真田も感激です。南条さんも良い味出していたし、星野くんや坂崎さんなど懐かしい顔ぶれで予告どおり詰め込んでありました。
 それでやっぱり神林の本音を引き出すのはいつも石井なんだなと、いっちゃんわからんと言いながらも、真正面から神林にぶつかっていくのは石井だけなんだなと思ったら、神林に対してある意味素直だがある意味まったく素直ではない石井盤という男の存在が愛しくてたまらなくなりました。

2008.07.16 Wednesday 21:01| comments (0) | trackbacks (0) |