音楽と友

 たまに音楽を嫌いになるときがあります。嫌い、というのとも違うかもしれません。嫉妬のような気もします。とにかく、嫌な気分です。何が嫌というわけでもないのですが。寂しいという言葉のほうが近いのかなぁ……ちょっと説明しにくいので、たとえ話を。
 友人が、私にギターを弾いてくれるんですよ。去年は博士論文を書いていて忙しくて、今年もだいぶ腕が落ちたからきみの前では嫌だと言って弾いてくれないのですが、三年位前まではほんの時々、ギターを弾いてくれました。いつも、私の好きな曲を弾いてくれます。私がリクエストするときもあるし、彼が勝手に弾き始めるときもあります。そこらへんは適当です。
 他に誰かいるときにも何か弾いている場合もありますし、私とふたりきりでも同じところだけをひたすら練習しているときもあります。しかし、彼が私に聴かせようと、私のために弾こうとするときは、雰囲気が違うので解ります。
 全然知らない曲だったり、私が自分でも練習している曲だったり(そして彼のほうが圧倒的に上手い)、私が彼の演奏で聴くのが一番好きな曲だったりします。彼は上手いですが、もっとずっと上手いひともいくらでもいるので、彼の演奏が好きなのだと思います。だから、そのとき初めて聴いた曲でも、私は、ああこの曲は好きだなあといつも思います。それで私は彼が常に私の好きな曲を弾いてくれていると思っています。
 とにかく彼は私に聴かせるためにギターを演奏するが、当然のごとく演奏中はギターと一体化していて、そういう彼を見ているのも悪くは無いけれど、なんだよ畜生お前、きみが聴いてくれるなら弾こうとか言ってたくせに私のこと完全無視じゃねーかよバカヤロウ! なんて思うことがあります。
 全然たとえ話じゃなくて思いっきり事実だった。友達の話なんだけどーとか言い出すひとみたいだね。
 あの、演奏中ってのはなんであんなに疎外感を感じるもんかねって話です。彼のギターは好きで、彼は私のために弾いていて、だけど彼は私を見ていない。なーんか納得いかねーぞ、という気分になるのですよ。せっかく弾いてくれてるの、悪いんだけど、そんなに私を無視してるならホームズのどこらへんがホモっぽくて苦笑してしまうのか、こないだみたいに熱く語ってくれていいよ、と思うわけです。なんでそんなとこばかり気にして読んでいるのか、そのほうが気になるけど。ところで目がチカチカして疲れるのが難だけど、私は原作が本当にこの英文なのか、そこは信用することにして無料で始めるトコトン英語で原文と対訳を見ています。
 で、明日はその経済学者とワタリウム美術館の「西欧思想一日大学」の講演「探偵小説、あるいは都市を歩く」を聞いてきます。まずはデュパンです。

2008.06.19 Thursday 22:36| comments (0) | trackbacks (0) |