誰がための停電か

 分からなくなってきました。
 原発が使えない、火力も停止させている、圧倒的に電力が足りない、節電にも限界がある。だから停電させる。それは分かります。
 でも、根拠も示されなければ節電の効果がどのくらいあったのか、そういったものはほとんど分かりません。グループごとの停電予定はというか予告は東京電力ホームページで確認出来ます。参考までに→3/19(土)〜3/26(土)の計画停電(実施)予定(pdf)とMSNが提供している計画停電カレンダー
 また、輪番停電の該当グループは「全戸停電」とお達しがあったにも関わらず、同じグループの中でも停電しない地域もあります。避難所ではなくて、一般の家屋で。駅も商店も市役所も、真っ暗なのに同じグループの一部だけが煌煌と点いている。駅前の大きな交差点の信号が無くて、田舎道の赤点滅が点いている。生死に関わる病院が自家発電で凌いでいるのに、何故か除外されている地域の自販機が明るい。
 そして何故その地域が外されているのか、説明は全くありません。不公平を感じているひとは多いでしょう。怒りを感じるひとも多いでしょう。
 なんなんだろう。輪番停電って。
 東京電力の輪番停電は、当然、東京電力の支配下での融通の話です。東北電力や中部電力はまず無関係です。茨城の被害が大きい、千葉もそれなり、でも都内の色々を止めるわけにもいかない、だから関東はみんなで協力する、これはご近所心理として共感を得やすい話だと思います。しかし、茨城の避難所を輪番停電させた件はもう東電も謝罪している から置いといて、その他、輪番停電の影響で鉄道や病院、市役所などが稼働しないというのは、「首都機能を生かす」という主旨に反していないでしょうか?
 地震が発生したのは、3月11日(金)14:46です。安全確認のためすぐに電車は止まり、その後、首都圏の鉄道は翌朝まで復旧しませんでした。停電も多く、私が横須賀から横浜方面へ車で移動する途中では、稼働してない上に交通整理もいない交差点が多くありました。
 JR東日本は12日(土)の朝7時くらいから少しずつ動き始めました。このとき、運転を見合わせていたのは、被害の大きかった茨城県の水戸線、銚子線などで、3割〜5割程度の運転本数でしたが京浜東北線・中央線・東海道線などは動いていました。私鉄各線も、通常だったり間引いたりそれぞれですが、始発からの運行です。これでやっと帰宅出来たひとも多いでしょう。13日(日)も、東北方面は運転見合わせでしたが、遅れながらも日暮里舎人ライナーや総武本線、京浜東北線、高崎線など全面的に運行していました。
 しかし、JR東日本の、輪番停電初日14(月)の運転状況は朝4時の発表では首都圏で同日に運行するのは、上越(東京―新潟)、長野(東京―長野)の両新幹線と、山手(全線)、中央快速(東京―立川)、京浜東北(蒲田―赤羽)、常磐快速(上野―松戸)、常磐緩行(綾瀬―松戸)の各線のみhttp://www.asahi.com/national/update/0314/TKY201103140056.htmlです。しかも乗務員が出勤できないことなどが理由です。JR以外でも、乗務員の確保が出来ないとして、運休や区間運転を余儀なくされました。
 電車が動かない、でも出勤したい、登校したい、病院へ行きたい、買い物へ行きたい、そういう場合、人々は車に乗ります。普段、あんまり乗らない人でも乗るんです。道路も渋滞します。そしたらガソリンが足りないのは当たり前です。
 輪番停電が予定されている時間帯は、安全のため商業施設が営業しません。病院の開業時間も限られます。検査は実施しないものが増えていました。透析は途中で止まると本当に命取りなので、確実な時間帯だけしかやらず、送り迎えもガソリン不足により不安定でした。個人商店は開いているところもありましたが、大型スーパーやショッピングモールはことごとく休業しました。ガソリンスタンドも、停電中は営業していません。このため、普段の、普通の買い物にも影響が出ました。そして、次いつ営業するか分からないのです。
 大きな地震への恐怖はもちろんですが、お店が営業していないから買いだめするという動機も、今回の買い占めの原因の一つであったと考えます。
 16日頃からはお店側も慣れたのか、twitterや公式サイトで営業時間帯を告知することも増えましたが、ネットが使えない場合は告知は無いのと同じです。告知をしている施設は少なく、行ってみて閉店していてガッカリ、営業予定の張り紙が出ていれば良いほうです。
 また、こんな状況でそんなに必死に出勤しなくても、という考えもありますが、輪番停電で休業した場合、休業手当を支払わなくていいと通達が出ています。もし、来れるひとは来て、来られない人は休業扱いにするなんて会社から連絡があったら、収入確保のためには無理をしてでも出勤するしかありません。

 昨日、コンビニ勤務の妹が、ものすごく怒り狂いながら帰宅しました。
「今日、廃棄が出た」
 昨日も今日も停電がありませんでした。スーパーも本屋も営業していました。本数は減らしているものの、一日中電車が動いていました。JR京浜東北線や東海道線は通常運転、地震以来ずっと動いていなかった相模線ですら区間限定ですが運転していました。小田急も相鉄線も全線運行です。
 ちゃんと普通の生活が出来れば、ほとんど被害の無い地域では、コンビニで廃棄が出るんです。買い占め騒ぎのときは、過去最高に近い売り上げを記録したお店でも。
 ふざけてるよなあ。本当に。ふざけている。
 無駄な停電が余計な混乱を煽ってしまっているとしか、今の私には思えません。
 もっとも、都民の彼氏に訊いたら、スーパーやコンビニは品薄だが大騒ぎするほどのことではない、とのことです。こちらでは市がやっている各種検診が中止になっているのに、彼は普通にバリウム飲んでました。そう聞くと、確かに23区の機能は落ちていないようにも感じます。でも、首都機能のために近隣の病院や食品工場まで混乱させる必要があったのでしょうか。
 停電した信号での死亡事故も起こっています。警察はすべての交差点に警官を立たせるには手が回らないそうです。おかげで緊急車両も出動します。そして給油渋滞で右往左往します。原発を持ち出すまでもなく、東電による人災でしかありません。

 こんな意見は後出しジャンケンみたいなものでしょう。やってみて、ここまで影響出るとは思わなかった、というのは私も思うところです。これまで実施したことの無かったことを、やったのですから手際が悪くて当たり前とも言えます。
 しかし、被災地はもちろん、その他でも病院とか鉄道とか、そういった施設までストップさせるとは、想像しませんでした。当然、除外すると思っていました。停電は一般家庭が基本的なターゲットで、公共施設やインフラ関係は、一般家庭や商業施設の停電で足りなくなったら実施する奥の手だと考えていました。
 東電は、電力を数値でしか考えていなかった。場所や使い道まで考慮していたわけではなかった。その点は、しっかり反省してもらいたいものです。
 東海地震のときは頼むぜ……

 そこらへんを鑑みたうえで。
 影響の無い地域は普通に生活すれば良いと思います。渋谷とか新宿の、騒音としか思えないBGMが無くなれば快適だろうからガンガン節電すれば良いと思うけど、暖房を切ってみんなで風邪をひいては余計な問題が増えるだけです。足下が暗くて転倒するとか。気持ちはありがたくても迷惑をかけては意味がありません。
 行き過ぎた自粛には疑問を感じます。マラソンだってゴルフだってやれば良いですよ。場所を西日本に移す必要はあるでしょうが、日本全国でいつまでもお通夜ムードでいると疲れてしまいます。被害を受けていないひとまでが、あれもこれも我慢することは経済の停滞を招きます。原発の様子は心配ですから、外国からの観光などはしばらくあてに出来ないでしょう。天下の台所にはおおいに経済を回してくれることを期待します。
 何事もやり過ぎは良くない。

2011.03.20 Sunday 20:48| - | - |