新時代の幕は開けたか

 つまりは琴欧洲優勝おめでとう! ってだけの話なんですがね。
 角界ではジェシーに始まりチャド・ローウェンの成功を経てハワイ勢だけではなく旭鷲山を筆頭としたまるで元寇のようなモンゴル勢の大躍進、両横綱がモンゴル人という外国人力士時代を迎えているわけですが(そしてハワイ勢は姿を消した)、黒海や把瑠都、露鵬などヨーロッパ勢は話題性はともかく実力は足踏みしていました。大関に琴欧洲がいるのにも関わらずです。
 彼は今場所カド番で、負け越せば大関陥落の危機を迎えていました。しかし今場所は白鵬の連続優勝か朝青龍の復活かに話題は集約されていました。両横綱が絶対的な強さと話題性を提供しているおかげで、四人もいる大関まで世間の目が向いてこないのです。ああまるで千代の富士時代、北勝海や大乃国だって横綱だったのに正直影が薄かったあの時代、小錦や霧島など横綱でもおかしくないと思われる力士が名大関と呼ばれてしまう、旭富士だってあんなに優勝しといて横綱になったのは遅かった、要するに横綱が強すぎて大関が苦労していたあの時代と似たような状況になっているわけです。
 現在の大関は琴欧洲、千代大海、魁皇、琴光喜の四人です。ここで、あれ? 琴光喜、いつのまに大関? なんて失礼なことも思ってしまう。すごいじゃん佐渡ヶ嶽部屋、大関二人もいるんだよ! しかしその事実はまったく凄みを持たない。かつて二子山部屋には貴乃花・若乃花を筆頭に貴ノ浪・貴闘力・濱ノ嶋・安芸乃島・隆三杉などの実力者揃い、これがまた藤島部屋と合併してこの大所帯になったため、同部屋の取組は無いという規定に則ると二子山部屋に異常に有利じゃないか不公平だと同部屋対決をするべきだという議論にまで発展したのですが、現在は見る影もなく諸行無常を感じますってそれはおいといて、とにかく現在の佐渡ヶ嶽部屋は他の部屋から文句が来ても仕方の無い状況なのです。
 昔から佐渡ヶ嶽部屋は大所帯で、琴錦・琴の若(当時は平仮名だった)・琴稲妻など常に数名を三役を含めた幕内に在籍させていてそれなりの勢力でしたが、二子山部屋の華やかさに負けていたのであんまり問題になってませんでしたけど。現在も大関が二人もいて、なおかつ琴奨菊が関脇なのに誰の眼中にも無い感じです。まあそれが琴ノ若クオリティと言われればそれまでですがね。
 同部屋対決の是非はともかく、平成14年11月、朝青龍が初優勝してから約6年、今場所を含めて33場所のうち、日本人が優勝したのはたったの5場所、すでに引退した栃東と現役の魁皇と千代大海の三人です。現役の二人にしたって大ベテランで若手はいない。後は全部モンゴル人なの。モンゴル人って言うか朝青龍と白鵬の二人なの。どっちかなの。どっちかっていうかほとんど朝青龍なの。33場所のうち、5場所日本人で6場所白鵬で残りは全部朝青龍なの。すげえよ朝青龍。ほんとに。
 平成18年初場所の栃東を最後に日本人の名前は姿を消します。その後はまさに青白時代と呼ぶのがふさわしい。朝青龍が7回、白鵬が6回の優勝をしています。そこに琴欧洲が割って入ったのですよ!
 平成13年9月琴光喜の平幕優勝(佐渡ヶ嶽部屋は平幕優勝が多い)を最後に優勝から遠ざかっている佐渡ヶ嶽部屋に久々の賜杯が、なんてことよりも、初のヨーロッパ勢による優勝だということのほうが重要なのです。じわじわと各国から挑戦してきているヨーロッパ勢、つまりモンゴルのように相撲が元からある国ではなく、ハワイ勢のようにジャパニーズ・ドリームを追って来日したわけでもない力士の優勝、これが重要なのです。
 これはまったく新しい形だと言わざるを得ません。普通に国際大会になっているとはいえモンゴル勢が多く、相撲文化を持つ別の国の実力者が頂点にいるというだけの状態だった角界にヨーロッパの風が吹き込んだのです。これは大変なことですよ〜とアデランスの中野さんに話しかけたくなります。ハワイ時代は終わった。モンゴル時代の全盛期に、本日琴欧洲が下した安馬もモンゴル人ですが、琴欧洲が対抗馬として完全に手を挙げたのです。彼の活躍を見てヨーロッパ勢が増える可能性もあります。それなりには強いが脅威というほどでも無い、というヨーロッパ勢の評価を琴欧洲は変えました。この優勝は歴史的に大きな意義を持つものなのです。貴花田が千代の富士を破ったときほどではないかもしれませんが、確実に楔を打ち込んだ優勝です。
 また、今場所は土佐ノ海と垣添が負け越しましたので来場所十両陥落となれば引退の可能性があります。出島も危ない。千代大海は来場所カド番です。雅山も負け越しました。ベテラン勢の限界を感じる結果です。金星五個の曲者、安美錦は健在ですけど。若手は稀勢の里が頑張ったくらいであとは奮いません。ベテランは静かに終焉を迎えようとし若手の躍進は見られない、全体としては感心できない現状ですが現在の実力者には好都合の時代でしょう。
 来場所は琴欧洲の綱とりになります。大関で足踏みをし始めたカロヤンに、私は失礼ながら失望し大関止まりかなーと勝手に思っていたのですが、先日のあの一番を見なかったことにすれば今場所の彼は本当に素晴らしい。強いだけじゃないし。ご覧になりましたか、優勝の瞬間を。あのお父様の喜びよう! 国旗を持って立ち上がり客席への歓声に応え、泣き出しそうな顔で手を合わせてお辞儀をしていたカロヤンパパの姿に目頭が熱くなりました。取組後は大喜びをしすぎない、控えめに、しかし嬉しそうに微笑む琴欧洲のいじらしさに胸キュンでしたよ。花道の奥で佐渡ヶ嶽親方と力強く握手をしてからインタビュールームへ向かう、その堂々とした後姿は貫禄もたっぷりで気高さを感じました。ああ、カッコいい。なのに世間は彼のことも胸毛がセクハラとか言うんですかね! JRは琴欧洲の写真が前面に出ていたら次場所の案内ポスターを貼らないのかね! まだそういう事態にはなってないですけど。
 琴ノ若ファンとしては、明日勝ち越しをかける琴光喜と琴奨菊が首尾よく勝ってくれれば、佐渡ヶ嶽親方も心置きなく美味い酒が飲めるだろうと思うので、千秋楽は琴光喜と琴奨菊の白星を期待しております。
 というわけで、琴欧洲初優勝おめでとう!!!!!

 今日気づいたのですが、私、昨日まで琴欧洲をずっと琴欧州と変換していました。正しくは琴欧洲です。お詫びして訂正します。皆さんもサンズイをお忘れなく!

 本日は参加したウォーキング大会の様子なんぞを、なかなか楽しかったので、書こうかと思っていましたが、カロヤンの優勝に心打たれたので歩き疲れた話なんてどうでもよくなりました。
 あ、ただひとつだけ、他の参加者に笑われたらしいエピソードを。
 ゴールは駅のロータリーだったのですが、ゴール地点に先にゴールしていた何名かとスタッフが目に入り、待ち構えていたみたいだったのですが、特に待ち構えられる理由も分からなかったので彼らの15メートルくらい手前でひょいっと本屋に入ってしまいました。12キロ歩いてゴール手前で本屋かよ! って。一応時間の記録とかもあるんだから先にゴールするだろって、言われました。もっと穏便な表現でしたけど。
 彼らに、歩いている間の話題はガンダムとゴルゴとエヴァンゲリオンだったとか、砂浜を歩いている途中では流れてくる川を追ってコースを外れて観察にいそしんでいたとか、実は本屋は他にも寄っているとか、ケーキ屋さんを冷やかしたりしてたとか白状したらどんな顔したんだろうと思うと楽しいです。道中でちらほら見かけた他の参加者は、我々よりずいぶん真面目だったようなので。

2008.05.24 Saturday 20:38| comments (2) | trackbacks (0) |